冊子を制作していると「ノンブル」という言葉に出くわすことがあります。聞き慣れない方でも、本や雑誌のページ端にそっと印字されている数字を見たことはあるはずです。あの小さな番号こそが、ノンブルです。
ノンブルは、読者にとっては現在地を示す目印です。一方、制作者や印刷会社にとっては、ページミスや落丁を防ぐための大切な確認情報でもあります。目立たない存在ですが、印刷物の品質を支える重要な要素です。
この記事では、ノンブルの意味と役割をはじめ、ページ数との違い、正しい付け方、隠しノンブルの方法まで、入稿前に知っておきたい基礎知識をわかりやすく解説します。
ノンブルとは?

ノンブルとは、本や冊子のページ端に記載されているページ番号のことです。書籍、雑誌、パンフレットなど、複数ページにわたる印刷物で使われるページ番号を指す用語で、「P.○」や「○」のようにシンプルな数字で表記されることが一般的です。
語源としては、フランス語の「nombre(ノンブル)」がよく知られています。なお、印刷・出版業界では、一般的な「ナンバー」ではなく、ページ番号を指す用語として「ノンブル」が使われています。
普段は意識しにくい言葉ですが、冊子制作や入稿作業を行う際には、意味を正しく理解しておくことが大切です。
ノンブルの役割
ノンブルの役割は、大きく分けて次の2つです。
- 読者が今どこを読んでいるか把握しやすくする
- 制作者や印刷会社がページ順や落丁を確認しやすくする
読者にとって、ノンブルは現在地を示す目印です。目次と組み合わせれば、目的の情報を探しやすくなります。授業や講習のテキストでも、「○ページを開いてください」と案内しやすくなります。

一方、制作者や印刷会社にとっては、ミスを防ぐための確認情報です。印刷や製本の工程では、ページ順のズレや落丁が起こることがあります。ノンブルが入っていれば、ページ抜けや順序違いに気づきやすくなります。
【独自アンケート】印刷物でよくある困りごと
印刷物の制作・発注は、思っている以上に「知らなかった」が積み重なりやすい作業です。
株式会社NEXERとWAVEが共同で実施した「法人印刷の課題に関するアンケート」(2025年10〜11月、仕事で印刷物の発注または制作に関わったことがある全国の男女121名対象)では、印刷物の発注・制作で困った経験が「ある」と回答した方が全体の32.3%にのぼりました。約3人に1人が、何らかの困りごとを経験していることになります。
困りごとの内容としては、次のような回答が挙げられました。
- 色の仕上がりが想定と違った
- コストが予算を超えた
- 印刷会社とのコミュニケーションがうまくいかなかった
- 折り加工や製本方法の選び方が分からなかった
「折り加工や製本方法の選び方が分からなかった」という回答は7.7%を占めており、製本に関わる知識不足による困りごとも少なくないことがわかります。
ノンブルも、製本工程に関わる重要な要素のひとつです。ノンブルの有無や付け方を誤ると、印刷会社とのやり取りにズレが生じたり、仕上がりに影響が出たりすることがあります。次の章からは、そうしたトラブルを防ぐための基本を順に解説します。
ノンブル=ページ数とは限らない

「ノンブル=ページ数」と考えて問題ないのは、本を読む立場の場合です。冊子を制作して印刷会社に発注する立場になると、この理解だけでは足りません。
印刷会社へ伝える総ページ数は、ノンブルの数字と必ずしも一致しないためです。ノンブルは本文の途中から始められますが、総ページ数には表紙や白紙ページが含まれることがあります。
たとえば、表紙・扉・目次・本文・奥付といった構成で冊子を作る場合、ノンブルは本文の最初のページを「1」から始めることがあります。一方、実際のページ数には、その前のページも含まれます。そのため、「ノンブルの最後の数字=発注時の総ページ数」にはなりません。
また、総ページ数の数え方は印刷会社によって異なります。表紙(表1〜表4)を含める場合もあれば、本文だけを数える場合もあります。発注前に確認しておきましょう。
WAVEでは、製造工程で必要なページ情報を主にデータのファイル名(例:P01P12.ai、P02P03.aiなど)とノンブルで判断しています。
ただし、データを見開き状態で作成している場合かつノンブルのないデザインの場合は、製本工程上でページ情報が判断できなくなるため、塗り足しの外に印刷されないページ番号を記載する必要があります。これを「捨てノンブル」と呼んでいます。
捨てノンブルは読者に見せるためではなく、印刷・製本工程をスムーズに進めるための情報として使われるものです。デザイン上にノンブルを入れない場合でも、捨てノンブルの記載を忘れないようにしましょう。
台割表でノンブルと総ページ数を把握しよう
ノンブルと総ページ数の関係を整理するうえで役立つのが、「台割表(だいわりひょう)」です。
台割表とは、冊子全体のページ構成を一覧で確認できる表のことです。表紙、扉、目次、本文、白紙、奥付など、各ページに何を入れるかを書き出して整理します。
下図は左綴じの12ページ冊子の場合の台割表の例です。


台割表を作っておくと、次のような点を把握しやすくなります。
- どのページにノンブルを入れるか
- 白紙ページをどこに入れるか
- ノンブルをどこから始めるか
- 発注時の総ページ数をどう数えるか
ページ数が増えるほど、頭の中だけで管理するのは難しくなります。手戻りを防ぎ、入稿をスムーズに進めるためにも、制作の初期段階で台割表を用意しておくと安心です。
ノンブルの開始ページの決め方
ノンブルをどのページから始めるかに、絶対の決まりはありません。ただし、冊子の構成に合った始め方を選ぶことが大切です。
大切なのは、ノンブルの開始位置を印刷会社と共有し、ページ数の認識にズレが出ないようにすることです。どの方法を選ぶ場合も、入稿前に確認しておきましょう。
本文1ページ目から
最も一般的で、ミスが少ないパターンです。表紙をめくってすぐのページ、つまり本文の1ページ目に「1」を付ける方法です。
このパターンの利点は、最終ページのノンブルがそのまま本文の総ページ数と一致するため、印刷会社への発注時の確認がシンプルになる点です。扉や目次がなく、表紙を開いたらすぐ本文が始まるような冊子には、この方法が最もわかりやすくおすすめです。
左綴じの冊子であれば、表紙を開いて右側にある本文1ページ目が「1」となります。ノンブルの開始位置に迷ったときは、まずこのパターンから検討してみましょう。
扉や目次の次ページから
表紙のあとに扉・謝辞・目次などを挟み、その後から本文を始める場合に使われるパターンです。本文が開始するページを「1」として、そこからノンブルを打ちます。
このパターンでは、扉や目次などの前付けページはノンブルなし(または隠しノンブル)で処理し、本文の始まりに合わせてノンブルをスタートさせます。読者に「ここから本編が始まる」という印象を与えられるため、物語や資料集など、本文の区切りを明確にしたい冊子に向いています。
ただし、発注時の総ページ数には、扉や目次のページも含まれます。ノンブルの「1」が冊子全体の1ページ目とは一致しないため、前付けの枚数も含めて台割表で確認しておきましょう。
ノンブルの正しい付け方丨位置・大きさ・フォント
ノンブルは「入っていればいい」というわけではありません。位置・大きさ・フォントを適切に設定しないと、断裁で切れてしまったり、本文と混在して読みにくくなったりするリスクがあります。ここでは、入稿前に必ず押さえておきたいルールを解説します。
ノンブルの位置
ノンブルは、仕上がりサイズの外には配置できません。また、端に寄せすぎると、断裁で切れてしまうことがあります。
配置の目安は、次の通りです。
- 仕上がり線から3〜5mm以上内側に配置する
- A4サイズの冊子であれば、端から10mm程度を確保すると安心
- ノド側に寄せすぎない
- 下部の小口寄りに配置するのが一般的
右ページは右下、左ページは左下を目安にすると、見やすく配置しやすくなります。

ノンブルの大きさ
ノンブルの文字サイズは、本文より小さくするのが基本です。ノンブルは本文を読む妨げにならないことが大切です。
たとえば、本文が10pt前後であれば、ノンブルは8pt以下にするとバランスを取りやすくなります。ただし、小さすぎると読みにくくなるため、6pt〜12pt程度の範囲での調整がおすすめです。
ノンブルのフォント
ノンブルのフォントや文字色は、本文と変えると見分けやすくなります。誌面全体の読みやすさにもつながります。
ただし、細すぎる明朝体や薄すぎる色は、小さなサイズにすると文字がかすれてしまうことがあります。印刷後の視認性も考慮して、線の太さのあるフォントを選ぶようにしましょう。
表ページは奇数・裏ページは偶数にしよう
ノンブルには、「表ページは奇数、裏ページは偶数」という考え方があります。絶対的なルールではありませんが、多くの冊子で使われている考え方です。
一般的な横組み(左綴じ)の冊子では、次の配置になります。
- 右ページ:奇数
- 左ページ:偶数
このルールからずれている場合は、ページ構成にズレがある可能性があります。台割表を見直し、ページ順を確認しておきましょう。印刷会社との検版も進めやすくなります。
【隠しノンブルとは】ノンブルを読者に見せたくない場合の対処法
写真集やイラスト集など、ページ全体をビジュアルで埋めたい冊子では、ページ番号が見た目の邪魔になることがあります。そのような場合に使われるのが「隠しノンブル」という手法です。
隠しノンブルとは、印刷後には読者の目に見えない位置にノンブルを配置することで、製本工程に必要なページ情報を保持しつつ、デザインの完成度を損なわないようにする方法です。ページ数としてはカウントされていますが、仕上がった本には番号が見えない状態になります。
隠しノンブルが使われやすいのは、次のようなページです。
- 扉ページ
- 奥付
- 白紙ページ
- 写真やイラストを大きく使うページ
ノンブルを入れるべき位置にイラストや写真がレイアウトされている場合も、隠しノンブルとして扱われます。
隠しノンブルの打ち方の例
隠しノンブルの基本的な方法は、製本後に隠れるノド側に配置することです。無線綴じなどでは、ノド側が糊付け部分になるため、仕上がり後は数字が見えにくくなります。
実務上のポイントは、次の通りです。
- ノド側の綴じ込まれる位置に小さく配置する
- 無線綴じでは使いやすい
- 中綴じでは使えない
- 事前に入稿規定を確認する
中綴じは中央をホチキスで綴じるため、ノド側まで開けてしまいます。そのため、隠しノンブルには向きません。隠しノンブルを前提にする場合は、対応できる製本方法かどうかを確認しておきましょう。
なお、WordやIllustratorなどで制作する際も、隠しノンブルの配置に誤りがあると印刷会社とのやり取りで手戻りが発生することがあります。事前に印刷会社のデータ作成ガイドや入稿規定を確認してから、制作を進めるとよいでしょう。
「隠しノンブル」と「捨てノンブル」は似ていますが、おおまかに以下のような違いがあります。
・隠しノンブル:印刷はするけれど製本後は見えなくなる。
・捨てノンブル:印刷しない。
まとめ
ノンブルとは、本や冊子のページ端に記載されるページ番号を指す用語です。読者にとっては現在地を示す目印であり、制作者や印刷会社にとっては、落丁やページ順のミスを防ぐための確認情報でもあります。
【本記事のポイントまとめ】
- ノンブルの数字と総ページ数は一致しないことがある
- 台割表を使うとページ構成を整理しやすい
- ノンブルは位置、大きさ、フォントの設定が大切
- 表ページは奇数、裏ページは偶数が基本
- デザインを優先したい場合は隠しノンブルも使える
- 中綴じでは隠しノンブルは使えない
冊子制作に慣れていないと、ノンブルの設定で迷うこともあります。そんなときは、WAVEのデータ作成ガイドやサポートを活用すると進めやすくなります。
WAVEは、オフセット印刷・オンデマンド印刷のネット通販専門店です。冊子制作に役立つ情報やテンプレート、仕様確認のための情報も用意されています。冊子の仕様や入稿方法を確認したい方は、WAVEのサービスページも参考にしてみてください。
この記事は2009年1月7日に公開したものをリライトしています。















