印刷用語集

2011.07.22  

水性顔料とは?メリット・デメリットや油性・染料との違いを解説

水性顔料とは?メリット・デメリットや油性・染料との違いを解説

印刷物を依頼する際、「水性顔料」を選ぶべきか迷ったことはありませんか?インクは一見すると種類が多く複雑ですが、広義には次の要素の組み合わせで成り立っています(※印刷方式やメーカーの設計によって細部は異なります)。

要素 代表例
着色剤 顔料/染料
溶媒 水/有機溶媒
バインダー 樹脂など
添加剤 乾燥の調整やにじみ防止、消泡など

着色剤が「顔料か染料か」、溶媒が「水性か油性か(溶媒が水中心か有機溶媒中心か)」といった違いが、発色・耐水性・にじみやすさ・適した素材などに影響します。選び方を誤ると、仕上がりが想定とズレたり、無駄なコストが発生したりすることもあります。

本記事では、水性顔料の定義からメリット・デメリット、他のインクとの違い、素材別の使い分けまで解説します。適切なインク選びで、より高品質な仕上がりを実現しましょう。

水性顔料とは?

水性顔料とは、水を主成分とする溶媒に顔料の微粒子を分散させたインクです。顔料は溶媒に溶けず、粒子として液体中に存在しています。

インクは色を出す着色剤と、それを運ぶ溶媒、そして紙などに定着させるバインダーで構成されています。水性顔料インクの場合、着色剤は顔料、溶媒は水です。紙に印刷すると、水分は紙繊維に浸透しますが、顔料粒子はほとんど表面に残って固定化されます。

インク選びは、溶媒の種類と着色剤の種類という2つの軸で考えると理解しやすくなります。

水性と油性の違い

インクの溶媒には、水性と油性の2種類があります。それぞれの特徴を理解することで、用途に応じた適切な選択ができるようになります。

水性インクの特徴

水性インクは水を主成分とし、有機溶媒を使用していないため匂いがほとんどなく、屋内での使用に適しています。有害物質である揮発性有機化合物(VOC)の排出 が非常に少なく、環境に優しい特長があります。

一方、水をはじくビニールやプラスチック、金属には定着しにくい弱点があります。油性インクより乾燥に時間がかかりますが、裏写りが少ない点は紙媒体への印刷で利点となります。

油性インクの特徴

油性インクは、アルコールやグリコールエーテルといった有機溶媒を使用しています。有機溶媒特有の匂いがあり換気が必要な場合もありますが、乾燥が非常に早い特長があります。

ビニールやプラスチック、金属など、さまざまな素材に定着するため幅広い用途に対応できます。屋外での使用や水に濡れる可能性がある印刷物にも適しています。

顔料と染料の違い

インクの着色剤には、顔料と染料という2つのタイプがあります。この違いは、溶媒に対して溶けるか溶けないかという点にあります。

顔料の特徴

顔料は、溶媒に溶けずに微粒子として存在する着色剤です。染料の粒子に比べて10倍から1,000倍以上も大きく、紙の表面に付着して色を定着させます。

最大の特長は、耐水性と耐光性に優れていることです。乾燥後は水に濡れても滲みにくく、太陽光による退色も起こりにくいため、長期保存する印刷物に適しています。文字やグラフィックがくっきりと鮮明に印刷できる点も大きなメリットです。

ただし、粒子が大きいためプリンターのノズルが詰まりやすく、定期的なメンテナンスが必要です。また、染料に比べると発色がやや控えめな仕上がりになります。

染料の特徴

染料は、溶媒に分子レベルで完全に溶け込む着色剤です。液体と一体化し、紙の繊維の奥深くまで浸透して鮮やかな発色を実現します。

最大の魅力は、色の鮮やかさと光沢感です。特に写真印刷では、グラデーションや微妙な色合いの表現に優れています。粒子として存在しないため、ノズル詰まりのリスクが低くメンテナンスも容易です。

一方、水に濡れると色が滲みやすく、紫外線で退色する可能性があります。長期保存や屋外使用には不向きです。

顔料インキと染料インキの違い

水性顔料のメリット・デメリット

ここまでの説明を踏まえて、水性顔料インクの具体的なメリットとデメリットを整理します。印刷物の用途や目的に応じて、これらの特性を理解しておくことが重要です。

水性顔料のメリット

水性顔料インクは、高解像度の印刷が可能です。

顔料粒子が紙の表面に留まることで、インクの滲みが少なく、文字や細かいデザインをシャープに表現できます。色ムラが出にくい点も、品質を重視する印刷物には重要な要素です。

耐水性と耐光性に優れ、色あせしにくく長期保存に適しています。また、無臭で有害物質の含有量が少ないため、オフィスや店舗など人が長時間いる環境でも安心して使用できます。

水性顔料のデメリット

水性顔料インクの最大の課題は、ノズルが詰まりやすいことです。顔料粒子が原因となるため、定期的な清掃やメンテナンスが必要になります。

耐擦性が弱く、こすれることで色が剥がれやすい点も注意が必要です。ラミネート加工や表面保護加工で対応できます。インクコストが比較的高い点も考慮が必要ですが、高品質な印刷物を求める場合は必要な投資だといえます。

水性インクのため、乾燥に時間がかかる場合があります。印刷後すぐに重ねたり梱包する際は、十分な乾燥時間の確保が必要です。

【独自アンケート】印刷物でよくある困りごと丨発色の問題とインクの関係

印刷物を発注・制作する際に困った経験があるかという質問に対して、全体の32.3%が「ある」と回答しました。約3人に1人が、何らかの困りごとを抱えています。

具体的な困りごとで最も多かったのが「色の仕上がりが想定と違った」で、30.8%を占めています。モニター上の色と実物が異なる、思ったより薄い、濃すぎるといった問題は多くの担当者が経験しています。

調査データ引用元:https://www.wave-inc.co.jp/weblog/?p=31651

色の仕上がりに影響する要因はさまざまですが、インクの種類や素材との相性は特に大きな影響を及ぼします。水性顔料インクは染料インクより発色が控えめな傾向があり、光沢紙では染料インクの方が鮮やかに仕上がることがあります。一方、普通紙やマット紙では水性顔料インクの方がくっきりとした仕上がりになるケースも多いのです。

事前にインクの特性を把握したうえで、データ作成ガイドや仕様説明を確認し、用紙・加工オプションを含めて条件をそろえて入稿すると、色味のズレを防ぎやすくなります。

水性・油性?顔料・染料?素材別に見る使い分けの例

ここからは、素材ごとにどのインクが適しているかを具体的に見ていきます。印刷物の用途や目的に合わせて、最適なインクを選ぶ参考にしてください。

紙は最も一般的な印刷媒体であり、インクの選択肢も豊富です。紙の種類によって最適なインクは変わります。

種類 適したインク
普通紙・マット紙 水性顔料インク:長期保存可能、鮮明な印刷に適している
水性染料インク:鮮やかな色彩、コスト重視
光沢紙・写真用紙 主に水性染料インク:鮮やかな発色と光沢感が必要な写真に適している
和紙 水性顔料インク:滲みを抑えられ和紙の風合いが活かせる

普通紙やマット紙には、水性顔料インクと水性染料インクのどちらも使用できます。文字がくっきりと鮮明に印刷され、長期保存を重視する場合は水性顔料インクが適しています。ビジネス文書やポスター、チラシなど、視認性と耐久性が求められる用途に向いています。一方、色彩の鮮やかさやコストを重視する場合は水性染料インクも選択肢となります。

光沢紙や写真用紙には、水性染料インクが最も適しています。鮮やかな発色と光沢感を活かし、写真やカラフルなグラフィックを美しく表現できます。ただし、光沢紙の表面がつるつるしている場合は、速乾性のある水性顔料インクも選択肢となることがあります。

和紙のように浸透性が高く滲みやすい素材には、水性顔料インクが推奨されます。表面に留まる性質により、和紙独特の風合いを活かしながら、滲みを最小限に抑えた印刷が可能です。

布への印刷では、洗濯や摩擦への耐性が重要です。

種類 適したインク
Tシャツ・バッグ・タオル 水性顔料インク:速乾性・摩擦耐性・洗濯後の色落ち防止に優れている
やわらかい風合い重視 水性顔料インク:においが少なく、やわらかな風合いに仕上がる

布印刷では、インクを布に定着させる工程が重要です。インクジェットの場合は水性顔料インクが使われることが多く、シルクスクリーンでは油性・水性のインクが用途に応じて使い分けられます。いずれも、印刷後に熱処理(乾燥・加熱)を行うことで定着し、洗濯や摩擦に強い仕上がりにつながります。

耐久性を重視する場合は、色落ちしにくい条件で仕上げやすいインク・方式を選ぶのがポイントです。やわらかい風合いを優先したい場合は、水性系インクを選ぶことで、布の質感を活かした仕上がりになりやすくなります。

プラスチック

種類 適したインク
通常のプラスチック 油性顔料インク:耐光性・耐水性に優れている
やわらかいプラスチック 水性顔料インク:素材によっては密着しにくいため、専用処理(プライマー等)や対応方式が必要

プラスチックは非吸収素材であるため、速乾性と固着性の高い油性顔料インクが推奨されます。耐光性や耐水性に優れており、屋外での使用にも耐えられます。看板やディスプレイ、パッケージなど幅広い用途で活用されています。

柔らかいプラスチック素材には、臭いの少ない水性顔料インクが使用される場合もあります。

木材

種類 適したインク
吸水性が高い木材 油性顔料インク:耐水性と速乾性に優れている

木材への印刷では、耐水性と速乾性に優れた油性顔料インクがおすすめです。

高度な技法として、染料と顔料を併用する方法もあります。

まとめ

水性顔料インクは、その高精細な仕上がりと優れた耐久性から、長期保存を必要とする印刷物に最適な選択肢です。しかし、ノズルの詰まりやメンテナンスが必要な点、乾燥時間が長いことなど、使用にあたっての注意点もあります。

用途や素材に合わせて最適なインクを選ぶことが、印刷物の品質を維持するために重要です。しかし、こうしたインク選びは難しいもの。

チラシ・ポスター・パンフレットなど、高品質な仕上がりを実現するために、専門知識を活かしてお手伝いさせていただきます。

品質や耐久性にお悩みの際は、ぜひWAVEにご相談ください。お客様のニーズに合わせた最適な印刷ソリューションを、豊富な経験と実績を持つプロフェッショナルがしっかりとサポートいたします。