資料や印刷物を作成する際、担当者によって表現にばらつきが生じ、修正作業に時間を取られていませんか?
会議で「トンマナを統一しよう」と言われても、具体的にどう進めればいいのか分からず、手が止まってしまう方も多いのではないでしょうか。
「トンマナ」とは、文章やデザインの一貫性を保つための基準です。これをしっかり設定しておくことで、ブランドイメージを安定させるだけでなく、制作作業の効率化にもつながります。
本記事では、トンマナの基本から、ライティングとデザインの具体的な設定方法まで、すぐに使える実践的なノウハウをお届けします。制作現場での手戻りを減らし、スムーズな作業進行を実現するための必読ガイドです。
トンマナとは?
トンマナとは「トーン&マナー」を略した言葉です。トーン(tone)は「調子や色合い」、マナー(manner)は「様式や作風」を意味し、制作物全体に統一感を持たせるためのルールを指します。

もともとは広告や出版業界で用いられていた専門用語でしたが、近年はWebサイトやSNS、印刷物など、多様な媒体で企業やブランドの世界観を表現する際に欠かせない概念として広く認識されるようになりました。
トンマナが整っていると、受け手は「このデザインは○○社のものだ」と瞬時に判断できます。一方、トンマナが定まっていない場合、同じ企業の制作物であっても印象がバラバラになり、ブランドとしての一体感が失われてしまいます。
トンマナには、次の2つの面での統一が含まれます。 文章面:文体や表記ルールの統一 ビジュアル面:配色やフォントの統一
なぜトンマナを整えることが重要なのか
トンマナを統一することは、単に見栄えを整えるだけのものではありません。ブランド戦略や業務効率の向上にもつながる重要な取り組みです。
ここでは、トンマナを整えることで得られる具体的なメリットを解説します。
ブランドの「らしさ」を印象付けられる
統一されたトンマナは、消費者の記憶に残りやすくなります。たとえば、コカ・コーラの赤と白の配色を見れば、誰もが瞬時に思い浮かべるはずです。色やフォント、言葉遣いといった要素を一貫させることで、一目見ただけで「あのブランドだ」と判断してもらえるようになります。
この効果は印刷物でも同様です。名刺やチラシ、パンフレットなど複数の媒体で色使いやフォントを統一すれば、受け手の印象に強く残り、ブランドの認知度向上に繋がります。
ブランドイメージに一貫性を持たせられる
制作媒体や担当者が変わっても、トンマナという基準があれば、ブランドの核となる世界観がブレません。Webサイト、SNS、印刷物など、さまざまなタッチポイントで一貫したメッセージを届けることで、顧客に安心感と信頼感を与えられます。
たとえば、Webサイトがカジュアルな印象なのに、パンフレットが格式高いデザインだと、受け手は混乱します。こうした不統一を防ぐためにも、トンマナとして明確なルールを定めておくことが欠かせません。
とくに印刷物は、一度制作すると修正が難しい媒体です。事前にトンマナを整理しておけば、制作後のトラブルを未然に防ぎ、スムーズに進行できます。
関係者間で認識の齟齬が出るのを防げる
複数人で制作を進める場合、トンマナが定まっていないと担当者が独自に進めてしまい、修正が増えて時間やコストがかかります。
トンマナをあらかじめ設定しておけば、デザイナーやライター、ディレクターなど、関わるすべてのメンバーが共通の基準を持って作業できます。その結果、品質のばらつきを抑えられ、制作スピードも向上します。
また、新人スタッフや外部パートナーに依頼する際も、明確なガイドラインがあることで指示がしやすくなり、クオリティコントロールも行いやすくなります。トンマナは、制作現場における「共通言語」として重要な役割を果たします。

【独自アンケート】トンマナを統一できている企業は少数
独自の調査によると「複数の印刷物(名刺・封筒・チラシなど)を作成する際、デザインの統一感(色やフォント、ロゴの配置など)を意識していますか」という質問に対し「非常に意識しており、ガイドラインに沿って制作している」と回答した企業は全体の20.7%にとどまりました。
一方で「ある程度意識しているが、明確なルールはない」という回答が58.7%を占めています。この結果から、多くの企業がトンマナの必要性を認識しつつも、実際にルール化して運用できているケースは少ないことがわかります。
統一されたトンマナは、ブランドのメッセージをわかりやすく届けるための土台です。トンマナにばらつきがあると、受け手に与える印象が安定せず、ブランドの信頼性にも影響します。誰が担当しても同じ品質を保てるよう、あらかじめ基準を作っておくことが大切です。
【ライティング】トンマナを整える際に決めるべき要素①
文章面でのトンマナは、読者にどのような印象を与えるかを左右する重要な要素です。ここでは、ライティングにおいて統一すべき具体的なポイントを解説します。文体や表記のルールを明確にしておけば、読みやすさと信頼性を両立できます。
ライティングのトンマナの要素
文章のトンマナには、読み手に与える印象を形づくる「トーン(感情的な印象)」と、表記や書式を定める「マナー(形式的なルール)」があります。これらの要素を統一しておけば、誰が執筆しても一定の品質を保てます。
文体・文末表現(敬体・常体など)
文体は、読者に与える印象を大きく左右します。「です・ます調」(敬体)は丁寧で親しみやすい印象を与え「だ・である調」(常体)は専門的で格調高い雰囲気を演出できます。
ターゲット層や伝えたいメッセージに合わせて文体を選ぶことが大切です。たとえば、一般消費者向けのWebサイトやパンフレットでは「です・ます調」が適しており、学術論文や専門的な報告書では「だ・である調」が用いられることが多くあります。
重要なのは、一度決めた文体を最後まで統一することです。同じ文書内で文末表現が混在すると読者に違和感を与えます。また、「~ですよ」「~ですね」といったくだけた表現や、体言止めの多用は避けるようにしましょう。
漢字・ひらがな・カタカナの使い分け
漢字とひらがなの使い分け(ひらき)は、文章全体の印象を大きく左右します。漢字が多すぎると堅苦しい印象になり、ひらがなが多すぎると稚拙な印象になってしまいます。たとえば「事」は「こと」、「更に」は「さらに」とひらがなで開くのが一般的です。
カタカナについても、外来語や専門用語の表記を統一しておくことが重要です。「ウェブサイト」と「Webサイト」「コンピュータ」と「コンピューター」など、表記ゆれが起きやすい言葉は、あらかじめリスト化して共有しておくと便利です。
弊社ブログでは、文章を読みやすくする「漢字の開き」について分かりやすく紹介しています。あわせてご覧ください。
漢数字と算用数字の使い分け
数字の表記も、統一しておくべき重要なポイントです。一般的には、算用数字(1、2、3)を使ったほうが視認性が向上します。
ただし「一人ひとり」「一つ一つ」のように慣用句として使われる場合や「一般的」「一部」のように熟語を構成する場合は、漢数字を用いるほうが自然です。
また、算用数字を使う場合は、全角か半角かも統一しておきましょう。本文中では全角、英数字が混在する表記では半角といったように、媒体や用途に応じてルールを決めておくと運用しやすくなります。
記号
記号の使い方も、文章の読みやすさに影響します。「」(かぎかっこ)は会話や引用に使い、『』(二重かぎかっこ)は強調や書籍名を示す際に用いるなど、用途に応じて使い分けましょう。
【】(墨付きかっこ)は見出しや重要な項目を示すときに便利ですが、多用すると煩雑な印象になるため注意が必要です。
また「・」(中黒)は箇条書きの先頭に使い「、」(読点)と「。」(句点)は文章中で適切に配置します。記号の使い方を統一しておけば、情報が整理され、読者の理解を助けられます。
段落・改行
印刷物では、読者が短時間で要点をつかめるように、段落分けと改行で情報を整理することが重要です。文章が詰まりすぎていると圧迫感が出て、視線が流れにくくなります。
たとえば、伝えたい内容ごとに段落を分け、1段落は3〜5行程度を目安にすると読みやすくなります。また、見出し直下は結論や要点を先に置き、必要に応じて箇条書きにすることで、チラシやパンフレットでも情報が把握しやすくなります。
文字数
印刷物は、紙面のスペースが限られるため、文字数を意識して情報量をコントロールすることが欠かせません。タイトルや見出し、本文の長さの基準を決めておくと、紙面内のバランスが整い、読みやすさとデザイン性の両立につながります。
本文は「1文を短めにする」「1センテンスに情報を詰め込みすぎない」ことがポイントです。長くなりそうな場合は文章を区切り、要点は箇条書きにするなど、紙面上で読み切れる分量に整えると伝わりやすくなります。
禁止表現
ブランドの信頼性を守るためには、使ってはいけない表現を明確にしておくことが重要です。たとえば「業界No.1」「最安値」といった誇張表現は、根拠となるデータがない場合、景品表示法で禁止される有利誤認や優良誤認表示にあたる可能性があります。
また、差別的な表現や、ターゲット層を不快にさせる言葉も避けるべきです。「誰もが」「絶対に」といった断定的な表現についても、慎重に扱う必要があります。
禁止表現のリストを作成し、ライターやチェック担当者と共有しておけば、法的リスクを回避しやすくなり、ブランドイメージの保護にもつながります。
出典:消費者庁ウェブサイト「有利誤認とは」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/advantageous_misidentification)
出典:消費者庁ウェブサイト「優良誤認とは」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/misleading_representation)
【デザイン】トンマナを整える際に決めるべき要素②
ビジュアル面でのトンマナは、ブランドの第一印象を決定づける重要な要素です。ここでは、デザインにおいて統一すべき具体的なポイントを解説します。とくに印刷物では、色の正確性やレイアウトの統一が品質を左右するため、細かなルール設定が欠かせません。
レイアウト
レイアウトは、情報の伝わりやすさを左右する基本要素です。Webサイトだけでなく、チラシやパンフレットでも、グリッドシステム(デザインの要素を整然と配置するためのガイドライン)を使うことで、視覚的な一貫性を保つことができます。
見出しは左揃え、画像は中央配置、余白は上下左右で統一するなど、あらかじめルールを決めておきましょう。レイアウトが統一されていれば、ユーザーは視線を自然に移動させながら情報を読み取れるため、内容の理解がスムーズになります。
余白
余白は、デザインにおいて重要な役割を果たします。余白が多いと「高級感」や「落ち着き」を感じさせ、少ない場合は「元気」や「にぎやかさ」を与える傾向があります。
ブランドのイメージに合わせて余白を意図的に調整することで、受け手に与える印象をコントロールできます。たとえば、高級ブランドでは余白を多めに設定し、若者向けのデザインでは情報を詰めて活気を演出するなど、目的に応じた工夫が可能です。
配色
配色は、ブランドイメージを決定づける最も重要な要素のひとつです。一般的には、メインカラー(コーポレートカラー)、ベースカラー、アクセントカラーの3色程度で構成します。
メインカラーはブランドを象徴する色であり、全体の印象を方向づけます。ベースカラーは背景や余白に使われ、デザイン全体の調和を保つ役割があります。アクセントカラーは、ボタンやリンクなど注目してほしい部分に使用し、視線を誘導するために欠かせません。
印刷物では、色の再現性がとくに重要です。カラーコード(色の指定番号)を厳密に管理しておけば、印刷のたびに色がブレることを防げます。また、CMYKとRGBの違いを理解し、媒体に応じて適切な色指定を行うことも大切です。
フォント
フォントは、デザインの印象を大きく左右する重要な要素です。明朝体は格調高い雰囲気を演出し、ゴシック体は親しみやすく力強い印象を与えます。ブランドのコンセプトやターゲット層に合わせて、適切なフォントを選びましょう。
紙媒体とWeb媒体では、視認性に違いがあります。紙では明朝体が美しく見える一方、Webでは小さな文字になるほどゴシック体のほうが読みやすいとされています。フォントの太さやサイズも統一し、見出しは太字、本文は標準など、階層を明確にしておくことが大切です。
画像
写真やイラストのテイスト、色調、加工方法を統一しておけば、ブランドの世界観を一貫して表現できます。たとえば、明るくナチュラルなトーンで統一する、モノクロで統一するといったように、あらかじめルールを定めておくと効果的です。
印刷物では画像の解像度が重要です。低解像度の画像ではぼやけて品質が低下するため、300dpi以上の画像を使用することをおすすめします。
また、POPやパネル印刷では、画像の品質とトーンの統一が店頭での訴求力に直結します。画像使用のルールを設けておけば、どの媒体でもプロフェッショナルな仕上がりを実現できます。
アイコンやボタンなどの素材
アイコンやボタンのデザインを統一しておけば、ユーザーの操作性や情報の識別性が向上します。とくにWebサイトでは、CTAボタン(行動喚起ボタン)のデザインを統一することで、ユーザーが次に取るべきアクションを直感的に理解しやすくなります。
印刷物でも同様に、矢印やマークなどの装飾要素を統一することで、視覚的な一体感が生まれます。素材のテイストを揃え、配色ルールやレイアウトルールに沿って統一することが大切です。
トンマナを設定する際のポイント
これまで解説してきた各要素を実際に設定する際には、いくつか押さえておくべきポイントがあります。ここでは、トンマナを効果的に設計し、運用するための考え方を紹介します。
誰に伝えたいかを明確にする
トンマナを設定する前に、まずはターゲット層を明確にしましょう。年齢や性別、職業、価値観など、ペルソナの解像度を高めることが、適切なトンマナ選びの絶対条件です。
たとえば、30代のビジネスパーソンをターゲットにする場合は、洗練された配色と格調高いフォントが適しています。10代の若者をターゲットにするなら、ポップな色使いとカジュアルな言葉遣いが効果的です。ターゲット層の課題や価値観を理解しておけば、彼らに響くトンマナを作ることができます。
コンセプトにマッチしたトンマナを考える
ブランドのコンセプトをキーワードに分解し、そこから具体的なデザインや文言のルールを導き出します。「自然派」「安心」「やさしい」といったキーワードが挙げられた場合は、それに合った配色(緑や茶色)、フォント(丸ゴシック)、言葉遣い(やわらかい表現)を選ぶとよいでしょう。
このときは、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を活用してアイデアを整理するのが効果的です。コンセプトを丁寧に言語化し、それをビジュアルや文章に落とし込むことで、一貫性のあるトンマナが完成します。
まとめ
トンマナは、ブランドイメージを一貫させ、受け手にしっかりと伝わるメッセージを届けるための最も重要なルールです。 文章面では文体や表記を、デザイン面では配色やフォントを統一することで、ブランドに対する信頼感と認知度が飛躍的に向上します。
とくに印刷物は一度制作すると修正しにくいため、名刺や封筒、チラシ、パンフレットなど、複数の媒体で統一感を保つには事前のトンマナ設定が不可欠です。表現が安定することで、ブランドの信頼性と認知度の向上にもつながります。
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